樹木を愛でる
先日、坂に寄り添う家に築7年の定期点検で伺いました。
新緑の季節ということもあり、樹木の葉が青々としていました。
年を重ねるごとに葉の量もどんどん増えています。
窓を開けると心地よい風が通り抜け、
庭の樹木がゆらゆらと揺れ、視覚的にも気持ちよさを感じられました。
居間には畳が敷いてあり、しばらく床に座ってぼーっと外を眺めてしまいました。
同じ部屋から反対側を見ると、中庭の木が見えます。
こちらもそよそよと風に揺れ、黄色の花を咲かせていました。
「今年も花が咲いた」とか「今年も実が成った」とか、
木も健康な様子が分かり、なんだか嬉しいですよね。
居間の大きな窓の外は、ちょっとした庭になっており、
ウッドデッキがあります。
デッキに座って正面を見たところ。
モサモサです。
見上げたところ。
ゆらゆらと揺れるアオダモの枝葉がとてもキレイです。
デッキに木陰ができ、気持ちよいです。
道路から見たところ。
木が大きく成長したため、ウッドデッキは木や塀の隙間から少し見える程度です。
木と塀に包まれたウッドデッキも、今がちょうど心地よい季節です。
さて、建築における「窓」には、
・自然通風を行う。
・太陽熱を採り入れ室内を暖める。
・太陽光を採り入れ室内を明るくする。
・外の景色を眺める。
・(外の景色が見えることにより)室内を広く感じさせる。
・災害時に脱出する。
など、さまざまな役割があります。
私たちは設計する際、それぞれの窓に意図して役割・意味を持たせ、
素材や大きさ、位置、開き方やガラス種類を選定します。
例えばこの家のキッチンの窓には、
・手元の明るさ確保
・窓を開けて通風
・外の景色を眺める
という3つの役割があります。
そして、外の緑が際立つよう窓枠は壁と同じ白とし、
ちょっとした物を置けるよう、棚のように設えています。
また水がかかりますので、耐水性という点でも素材を考慮しています。
こういった計画は間取りを検討する段階で始めています。
(施工中)呉松町の家
(施工中)袋井市の家
窓の先に気持ちの良い風景が計画できているか、
明るさは確保できているか、西日は遮られているか・・・。
自問自答しながら計画を進めます。
敷地調査のときに計画地周辺を散策し、周りに何があるのか、
何が見え、どんな匂いや音がするのか、
意識して感じ取らなければ、窓の設計は上手くいきません。
また、この景色はそこに住む人のためのものだけではありません。
隣に住む方や、散歩や通勤、通学などで家の前を通る方にとって、
心地の良い風景や思い出の場面になって欲しいものです。
近所にお気に入りの風景があると、遠回りしてでも通りたくなりますよね。
そして住まい手の暮らし方に合わせ、
無理なく管理できる範囲を提案することも、私たち設計者の役割です。
増田光