すべてご要望どおりに?
あるお客様からそのような言葉を頂きました。
そうは言ってもご要望を頂かないと後々…
という本音もあるのですが確かに要望通りにつくるという事は一見正しく、難しいことのように感じますが、同時につくり手の責任も薄まり、安易な気がします。
こんなご経験はございませんか?
衣服、靴、アクセサリーなどを合わせる時、自分の好きなものだけ
を組み合わせてみてもうまく合わない…。
全体のバランスがどうか、その人に合っているかどうかは自身では気づきにくく…
その為に、引出しと経験の多いプロのファッションコーディネーターがいて。
また、原因がよくわからず体調を崩した時など、
医師に掛かったは良いのですが、問診、診察もほどほどに病名が
下され処方が決まった時、不安に感じる。他に原因はないのか…。
住宅設計においても「問診」は重要なことですが、表面的なことばを捉えるのではなく、本当に必要な「診断」そしてそれに対する「処方」は何なのかを考えることは、家づくりにおいても通ずるところがあるように思います。
時には、家づくりに関係ないと思われる会話から解決案が生まれ、
時には、敷地にある問題を診断しそれがヒントになったり。
サン工房では、設計の前にご要望を細かくお聞きしておりますが、
要望をそのまま設計に詰め込んでしまうと、色んな意味でバランスの悪い家になってしまい、仮に要望がすべて満たされ、お施主様には喜んで頂けても、実際に住んでからの住み心地につながるかどうかは別問題です。
「すべてご要望どおりに。」
ではつくり手の責任が足りないのかもしれません。
多くの家づくりのお手伝いをさせて頂く中で、どこかで気づいていながら改めて気づかせて頂いたお客様に感謝しつつ、
偏りのない知識と引出をもっと増やし、実経験を更に積み重ねていかねばと身が引き締まる思いです。