幸せについて
私が設計させて頂いた家の名前には「幸」の字を入れるようにしています。それは、その家に住む人に、もっと幸せになって欲しいという願いがあるからです。
でも、「幸せ」は曖昧な言葉で、確固たる具体的な状態は定められません。そこで、「幸せ」について、もっと学ぼうと思い、参考になる資料を探していたら、ある本に出会いました。
谷川俊太郎著「幸せについて」
谷川俊太郎と言えば、教科書にも載っている有名な詩人です。今年で91歳。そんな谷川氏が87歳に記した本です。80年以上生きてきた大詩人が「幸せ」をどう捉えているかに興味を持ち、すぐに取り寄せて読んでみました。
この本の中には、全107ページにわたって、1ページに1つずつ谷川氏が思う様々な形の「幸せ」が書かれてありました。そして、たくさんの捉え方で「幸せ」を語った後にあとがきでこう締めくくってありました。
(以下本文より抜粋)
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過去が気にならない、未来も気にならないで、「いま・ここ」に在る。これが、ぼくが考える幸せの基本形です。「幸せ」というのは、とても個人的でプライベートなものだと思っています。だから、そんなにはっきりとした言葉で定義できるはずはないんです。
本当の幸せというのは、なんだか訳がわからないけれど自分の中から湧き出してくるイノチのエネルギーなのかもしれません。
そして、そのイノチのエネルギーは、ある秩序を守って生活していると、本来自然に湧き出てくるものではないでしょうか。
(中略)
幸せについて語る言葉は掃いて捨てるほどありますが、どれも明快なものではありません。幸せという美しい蝶は、ピンでとめて標本にすることが出来ないようです。
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あれだけ、様々な形で、幸せを語った後に、なんとも潔い締めくくり方です。つまり、「幸せ」とは、どっかの誰かの言葉で表されるものじゃなくて、自分が、いま、ここ、で感じたもの。という所に行きついたということだったのですね。
この本を読み終わり、後日、内容を振り返りながらあらためて「幸せ」について考えていた時、
「自分のココロをそのまま認めて良いんだよ」
そんな言葉が、ふと聞こえてきました。今より少しだけ目線が上に上がったような気がしました。
あなたは、いつ、どこで、幸せを感じましたか?(複数回答可)
その答えをヒントに、幸せを感じる瞬間が一つでも多くなるような家をこれからもつくっていこうと思います。
大西 等
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