まといの家 改修計画

まとい(円居・団居)
①人々が輪になって座ること。車座になること。
②1ヶ所に集まり会すること。特に親しい者どうしが集まって楽しむこと。

1Fをメインに水廻りの改修や間取りの変更などを行った”まといの家”。
お施主様のご要望から、設計提案までをご紹介します。

お住まいは築30年になるご主人のご実家。ご両親が引っ越されてしばし空家となっていました。
息子さんご家族が住まわれることとなり、よりご家族の生活に沿った、お気に入りの空間で毎日を送れるようにと、わたしたちにお声を掛けくださいました。

設計にあたり、新築と同様に「物語」と呼ばれるご要望書に今の暮らしやこれからのご希望を書き込んでいただきました。


リビング

・必要なとき、必要なものがすぐに取り出せてしまえる収納がほしい。
・外とつながりのある窓とウッドデッキがほしい。
・チークの床や勾配天井、間接照明が好き。格好いい空間にしたい。

キッチン

・日中電気を付けなくても明るく、開放的な場所で料理がしたい。
・ゴミ箱の居場所をつくり、省スペースにまとめたい。


洗面脱衣室

・洗濯物をハンガーに掛ける作業、干して取り込む動線をスムーズにしたい。
・タオルを乾燥機で乾かして、その場でたたんでしまいたい。
・下着類は洗濯して、室内干し、収納するまでを1室で完結させたい。
・汚れものを洗う、つけおきする専用のシンクがほしい。


浴室

・床があたたかく、掃除がしやすいようにしたい。


トイレ

・掃除用具、トイレットペーパーのストックをしまいたい。


玄関

・和の雰囲気にしたい
・買い物かごを置いておく収納スペースが欲しい
・濡れた傘を掛けて乾かせるようにしたい


 

ご要望の聞き取りを終えて、設計提案に進みます。

お打合せのたびにニコニコと迎えてくれる子供たち。その子供たちを明るい笑顔で、温かく包み込むようなご主人と奥様。そうしたご家族の様子を見るうち、ご家族それぞれの時間にあっても、ふと目線を上げるとその先に家族の誰かの顔があり、ときに目が合ってにっこり笑い合う。そんな暮らしの場面が思い浮かび、ご提案の形が出来上がっていきました。

また工事をするお住まいは、築30年ながらも丁寧に造られて大切に住まわれてきた、綺麗で広々としたお住まいです。
全体に薄く手を入れるよりも、そのままで生活できるところは極力費用を掛けず、生活の中心である1階のLDKを中心に予算を掛けて改修した方が、空間の完成度も上がり満足度も高くなると考えご提案を進めました。


リビング・ダイニング・キッチン

・リビングとキッチンを隔てる壁を撤去し、キッチンから全体が見渡せる空間としました。
・本棚や窓際にベンチを作って多くの居場所を設けると共に、壁を背にして互いに中央を向くレイアウトとしました。
・ダイニングの腰窓を掃き出し窓とし、ゆとりあるウッドデッキを設け内と外を繋げました。
・リビングとダイニング・キッチンとで天井の意匠を変えることで、空間が間延びしないよう配慮しました。


玄関

・洋風なデザインの手摺や収納家具を撤去し、格子や杉の天井、製作家具、左官職人による塗り壁で隣接する和室とのバランスを意識した和の雰囲気としました。


洗面コーナー

・朝の忙しい時間帯の動線を改善するため、ドライルーム、脱衣室とは別に廊下に面して洗面コーナーを設けました。
・インスタグラムで気に入った写真を教えていただき、周りとのバランスをとりつつ、お打ち合わせを重ねて意匠を決定しました。


ドライルーム、脱衣室

・スロップシンク、洗濯機、乾燥機、室内干し、カウンターを1室にまとめ、洗濯から収納までの動線がコンパクトになるよう計画しました。
・奥様がひといきつける場所にもなるよう、エアコンの存在感をおさえる格子を設け、居心地にも配慮しました。


 

その他、居住性を向上させるための断熱改修やサッシ、ガラスの交換、耐久工事としての外壁塗装等もご提案しました。

最終的には、予算を踏まえて今回の工事でやっておくべきこと、数年後に経年の状態を見ておこなうこと、暮らしの中で必要かどうかを判断することなどに分けて検討を進め、工事内容を決定しています。

今ある住まいの状態を正しく捉え、活かすところ・手を入れるところを検討してコストバランスを図り、予算に合わせて住環境が整えられるのは新築にはないリノベーションの大きな魅力のひとつですね。

鈴木孝明

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