最期の時を。

「最近の家は、寝室の優先順位の低い間取りが多いねぇ。」

とある建築賞の審査を受けている際に、審査員の方からそのような言葉をいただきました。

私は比較的若い頃に両親を亡くし、母については実家の寝室での介護、そしてその最期を看取った事も記憶に新しいのですが、そのような経験から寝室についての考え方が少しずつが変わってきました。

もちろんリビングやダイニングを差し置いて、寝室を優先して考える事はなかなかできませんが、病にかかったとき、落ちんでいる時、静かにひとりでいたい時など、人は誰もいつもでも元気とは限りませんので、そのような見方で寝室を考えると、寝室が寝るだけの部屋とは思えなくなってきます。

お子様が小さい時は家族みんなの寝室であったり、いずれは夫婦の寝室になり、さらにはひとりの寝室になり、そして最期の時を迎える場所になるかもしれません。

ベットの配置は?窓の位置は?大きさは?景色は?明る過ぎない?夜のあかりは?天井は?音は?など、色んな事が気になってきます。

家全体の間取りの中で寝室の優先順位はなかなか上がりませんが、せめて寝室の内部でできる事を追求できればと思います。

家を建てる時に、寝室で最期を向かえる想像はなかなかできませんが、そこまで考えが及ぶとまた見える景色も変わってきます。

岡本 茂揮


岐阜県にある「瞑想の森」

設計者ブログ

前の記事

刻む 紡ぐ
スタッフ

次の記事

侵入者