空気感
題目と簡素な装丁に誘われ、「空気感」という本を読みました。
著者はピーター・ズントーというスイスの世界的建築家で、作品こそ少ないのですが、温かみがあり、その場や用途に合わせた素材、芸術に近いようなその建築は、自分が生きている間に一度は実際に見てみたい建築のひとつです。
この本は、氏が考える優れた質の建築とは何か?
という問いに具体的にわかりやすく答えています。
「ある建物の中に足を踏み入れ、その空間を目にし、同時にその場の空気を感じ取る。しかも一瞬のうちに、そこがどのようなところなのか、感知するわけです。・・・その感覚が信じがたいほど一瞬にのうちに作動するのは、人間が生き延びるためにこの感覚を必要とするからでしょう。」
という一文にがあります。
ひとは安心する場所や、居心地が良い場所は、わが身を守る本能から、一瞬にして誰でも判断する能力が備わっているというのです。
日々の設計活動のなかで居心地の良い場所や、安心できる落ち着いた空間ははどうしたらできるのか?ひたすら試行錯誤するのですが、実は誰もが瞬時に善し悪しの判断できる感覚を持っている。
・・少し救われるような気持ちになります。
確かに、レストラン、カフェ、図書館、浴場、公園、浜辺・・・などなど様々な公の場で席や居場所を決める際は、皆さんも、考えるというより感覚で瞬時に選択しているのではないでしょうか。それも本能的に。
こと住居の設計においては、人の居場所、居心地はとても大切です。
設計の際は定量的な理屈や技術は勿論必要ですが、上記のような建物が心に触れる感覚がまず先に在り、それに素直に従うような設計・建築ができればと思います。
岡本茂揮