次の世代へ


先日、ずっと前から見たかった奈良の東大寺に行ってきました。
修学旅行では代表的な場所ですが、恥ずかしながら今まで一度も行ったことがなく東大寺を始め、新薬師寺、興福寺とお寺と仏像をゆっくりと堪能して参りました。

その中でも特に印象深かったのが、東大寺の大仏殿から二月堂に続く道程にある古い漆喰の壁にしばし足を止められました。その壁は漆喰が部分的に崩れ落ち壁の中の状態が見えるようになっていたのです。見方によってはただの崩れた壁にも見えますが、こういった仕事をしていると、仕上げの良し悪しはもとよりこの壁がどのように形成されているかなども、とても興味深く見入ってしまうものです。

その壁は幾層にも土が折り重ねられ、かつその土を安定させるかのように瓦が幾層かに分けられて重ねられており、その積み重ねられた土と瓦を包むように漆喰が塗り上げられておりました。

建造当時は今の時代のような便利な道具や電動工具や機械があるわけではなく、すべてが人力と人の手仕事によって造られていることに、驚きや感動と共にどれだけ苦労して造り上げたんだろうという、当時の職人に対して尊敬の念が堪えません。

私たちも新築工事や改修工事を手掛けておりますが、この時の仕事や職方には足元にも及ばないところがたくさんありますが、何十年かした後に、次の世代やまたその次の世代の人たちに解体工事や改修工事で見られた時に、堂々と恥ずかしくない、少しでもお手本となれるような仕事をしていきたいと思います。

金原陽一