祖父との想い出
私の祖父は大工でした。自宅の加工場で材木に墨付けをして手刻みで加工をしていました。途中から独学で宮大工の技術を勉強して神社を建て直したこともありました。
幼い頃は、木材を加工した時に出てくるおがくずに飛び込むのが好きでよく散らかしては祖父に怒られていました。
そんな祖父は、私が建築の道に進んだことを知らないままこの世を去りました。あれから8年程経ちますが、自宅には大工道具や機械がたくさん残っており、祖父との想い出が蘇ってきます。現在、木材の加工はプレカットが主流ですが、サン工房では手刻み加工を続けています。
無垢の木はその1本1本が異なる性質・くせを持っている為、職人の目でそれを見極め、それぞれに見合った加工を施す必要があるからです。この仕事をするようになってようやく祖父が加工場で何をしていたのか理解することが出来たと思います。
人の手でないと出来ない事、それは大工に限ったことではなく設計の仕事にも言えるのかもしれません。要望だけ反映させるのでは通販で商品を購入するのと同じです。要望だけでなく、想い出、家族構成、周辺環境などを聞き取ることでその人に合った家を知ることができます。
そんな家づくりのお手伝いができるよう、何のために人の手で考え作るのか念頭に置きこれからも精進していけたらと思います。
竹内花織