自らは暮らせない

『家が完成してサン工房さんもひと区切りですね。』

住まいのお引渡しの際に、お施主様にそのようなお言葉を掛けて頂いた一幕がありましたが、答えはいつも『いいえ』です。

これからここで暮らしが始まり、家事はしやすいか、収納は足りているか、スイッチ、コンセントの使い勝手、日中の明かり、夜の灯り、暑さ寒さは、家具・家電の納まり、窓からの眺めは、素材の選定は、メンテンナンス性は、お庭は、そもそも気に入って頂けているか・・・

お引渡しの際は様々な想いを巡らせながら、その責任の重さを感じる瞬間でもあり、幾多のお引渡しを経ても慣れる事はありません。

上記はまだまだ目先の話で、さらには季節を通してどうなのか、もっと先の10年後、20年後、30年後は・・・残念ながら私たちが実際に設計・施工させて頂いた住まいに暮らすことはできません。本当の答えは住まい手にあります。

私たちの住まいづくりに100点というものさしはないと思います。在る条件で最善を尽くし、改善すべくは改善していき、良い所は活かし、新しい技術は取り入れながら、変わらずに変わっていく。

完成時に大きな達成感や満足感を得ていたら、私自身それ以上の成長を求めてないのかもしれません。

住まい手にとってはひとつのお住まいであり、それぞれの暮らしが始まり、年を重ねても今も住み続けているという事を忘れないように。

岡本