小さくて広い家?
「Q:どんな家に住みたい?」
「A:小さくて広い家に住みたい!」
回答くださったのは4歳の女の子。どんな想いでその言葉に辿り着いたか定かではありせんが、住宅設計の奥深さを表現した言葉にハッとしました。
「小さい」と「広い」は相反する言葉のように思えます。また「小さい」という言葉にネガティブな印象を受けますが、実際にどうでしょうか。
例えば、無駄が少ない間取りは通路も少なく、生活動線も短くなり暮らしやすくなります。また、部屋と部屋に連続性を持たせたり、用途を上手く兼ねる事で、空間に広がりがでます。その結果、面積は小さくなります。
開口部(窓や戸など)の位置や大きさ、開閉方法の選択次第でも見え方は変わります。遠方への視線の抜けがあると、内と外をつなぎ開放的に感じます。
上記はほんの一例にすぎませんが、建築は立体空間ですので、
小さい家=狭く感じる、とは限らず、
大きい家=広く感じる、とも限りません。
間取り図からは見えてこない室内空間の質は、設計者の考え方や創意工夫、探求心、または良い建築空間をたくさん体感している、などその人の技量に依るところが大きいのではないかと思います。
同時に空間全体の設計意図をお客様に分かりやすく伝える事も忘れてはいけません。
無駄が少ない設計が絶対的な正解とも思っておりませんが、昨今のウッドショックを始めとした様々な材料の価格高騰を受けて、設計図の線一本一本、材料のひとつひとつ、図面では表現されない部分こそ、明確な意図がなければならないと思います。
そのような意味では、自身の設計力を鍛える良い機会なのかもしれません。
「小さくて、広い家に住みたい!」
私よりも遥かに若いお客様から、深いお言葉を頂きました。改めて自身を省みる機会になり、それを実現するべく日々の設計に励みたいと思います。
岡本茂揮