空気をつくる

タイトルを見て、断熱、換気などの話かと思われたかもしれませんが、そうではありません。

「ふつう」という本の中で「空気をつくる事」ということばが使われています。

デザイナーの深澤直人さんの著書で、デザインが好きな方はよくご存じだと思いますが、MUJIなどのデザインで著名な方です。

先日のサン工房のブログでも、「ふつうのいえ」というタイトルがありましたし、私も何度かこのブログで「ふつう」についてお話したと思いますが、続編だと思ってください。

この本を読むといつもニヤニヤしてしまいます。

わたしの考えている事を肯定してくれるような、いつも違和感を憶える事に対する答えを示してくれているような気がするからです。

また、このような考えで実際にモノづくりをしている人が日本にいて、それに共感し、安心しているニヤニヤではないかと思っています。

特に住宅設計のしごとをしているとお客様のご要望を叶えるべく、何かやってやろう!格好の良い外観にしよう!と気づけばひと手間、ひと飾り・・・

その結果、より複雑で過分な事をしそうになり、何か違和感を感じたり、自身の仕事に不満足感があったりと、もやもやとした感覚になります。

そんな時にこの本を読むと、ひと呼吸おいて落ち着く事ができます。

本の内容は、工業製品や工芸品、または建築などを例に、ひたすらに「ふつう」とは何かを問うているのですが、もはやふつうを考える事がふつうではないのでは?のような禅問答になっていて、それでもふつうを追究していること自体がとても面白くもあります。

「ふつう」に明確な答えはないと思いますが、人がほっとする事や、安心する事の中心に「ふつう」という言葉は必ずあると思います。

・ふつうは幸せの中にある
・ふつうを味わうために生き抜く
・かっこいいふつう
・ちょっといいふつう
・残ったものがふつう
・ふつうは無意識のデザイン
・ふつうには勇気がいる。
・ふつうは恥ずかしいことなのか。
・ふつうがいい事に人は暗黙に気づいている。
・素のままがかっこいい。
・変えない事もデザイン
・デザインしないデザイン
・出来上がりが一番きれいでなく
年月と共に味わいを感じるもの。
・ひとは違和感にはすぐに気づく。
しかし、なぜいいかは考えない。
いい雰囲気をつくる事。結局は空気をつくる事。

などなど、この本に書かれている言葉のほんの一例ですが、どの文章を切り取っても安心する言葉ばかりです。

住宅設計もデザインの仕事のひとつだと思いますが、深澤直人さんのいう「デザインは人が暮らす空気をつくる事」だとすれば、建築のしごとはとてつもなく責任のある事です。

また、多くのモノの価格が高騰している今こそ「ふつう」とは何か、を考える事は時代にも合っているように思います。

そのような意味でも自分を見失いそうになったらこの本を読んで、またニヤニヤしながら自らを律していきたいと思います。

気づけばこのブログも過分な機能のない「メモ帳」というアプリを使って書いておりました。結局いつも使っているもの、長く使っているものは…。

※私のそばにいる愛用品たち


変わらずにそこに在るもの、こと、ひとは、なんか安心しますよね。

岡本 茂揮

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