リフォーム記録
浴室改修工事 11【リノベーション・躯体補強施工編 アンカー加工】
築年数、約26年目を迎えるお住まいの浴室改修工事です。
前回はアクシデント発生で少々振り回されましたが、工事の進行に合わせてしっかりと修繕していきます。
さて、それでは浴室側の工事に目を向けましょう。
前回では、土台の仮置きまで作業が進みました。次工程ではこの土台をしっかりと基礎に固定させる必要があります。ご承知の通り、既存のアンカーボルトはボロボロで使用できず切断してしまいました。
したがって、本締め用のアンカーボルトを新たに基礎に打ち込んでいく作業に移ります。既製品でも長さの種類はいくつかあるのですが、今回はホールダウンアンカーや全ネジボルトを所定の長さに切断加工するようにいたしました。
先ずはホールダウンアンカーから加工です。
(基礎への埋込寸法)+(土台部材の高さ)+(ボルトの突き出し寸法)+(補助金具の長さ)+(ホールダウン金物の高さ)+(ナットの締めシロ)=これらの合計寸法を算出してアンカーボルトの加工長さを算出します。
先ずは絶対的に守るべき条件から。
コンクリート部への埋め込み長さというものには決まりがあって、ごく一般的には8Dを基本とします。この規則によって定められた長さのことを”定着寸法”(ていちゃく)といいます。
Dとはボルトの直径を意味し、8というのはその倍数となります。
すなわち、鉄筋の直径×8=定着寸法、このような理屈となります。
ホールダウンアンカーはD16の物を使用しますので、
8×16=128mmが定着寸法となります。
上記定着寸法をしっかりと確認をして、所定の長さにカットします。
グラインダーの取り扱いには十分注意が必要です。
切断した先端はそのままの寸切りでも良いですが、今回は山形にVカットしています。
加工されたアンカー部材です。ホールダウン用には専用の異形アンカーボルトを使用し、土台の固定にはステンレス製の全ネジボルトを選択しました。もちろん、通常のクロメートメッキ材でも問題はないのですが、こ・ん・ど・は絶対に錆びさせないぞという想いで奮発しました。
今回は接着系アンカーを使用します。これを通称ケミカルアンカーと言います。
使用するケミカルアンカーは、カプセルタイプのMUアンカーを使用しますので、製品の仕様規定では穿孔長さは140mmとなっています。
したがって、先述の128mmという定着寸法は十分にクリアされるようになります。
ちなみにですが、ステンレスの全ネジボルトはM12を使用しますので、12mm×8倍=96mmとなり、MUアンカーの仕様規定では穿孔110mmの定着寸法ですので、こちらも十分にクリアしています。
よろしければ下記も併せて参照してください。
以前のブログでもこのアンカーボルトについて書きましたが覚えていますか?
劣化や損傷という理由もあり切断をしておりますが、仮に劣化しておらず健全な状態であっても、私は“切断”という判断を下すと記載しました。
『なぜ、使えるボルトまで切断するんだ?』
↑これですね
その理由は土台部材の欠損を最小限で抑えたいからなんです。
次の図をご覧ください
先ずはごくごく一般的な場合としてのお話しです。
基礎にアンカーボルト(以下アンカー)が存在する場合、それを上手に活用しようとするので切断はしない場合が多いでしょうか。
使える部材は上手に再活用するというのが、基本的な考え方の一つとして挙げられます。
ただし、アンカーが存在していて、その上部に何かしらの部材がある場合、新築のように土台に穴を開けて上から落し込むという方法は、部材同士が干渉しあってぶつかってしまう為適用できません。
一言で言えばその所作はNGということです。
その時は、土台に穴をあけるのではなく、アンカーが取り付くところに溝を切り込むような形に加工して、横スライドさせるような形で土台を入れ込むようになります。
これがダメという事ではないですよ。
以下は私の個人的な価値観になります。
なぜ、せっかくの新しい部材にそんな大きな欠き込みをしなければならないのか、、
そんな事したら部材の強度が弱くなっちゃうし、、それ嫌だな、、
こんな感じに思うわけです。
まぁ、そんなことは無いでしょうが、感覚的になんか“ポキッ”と折れそうな感じがしてしまい、どうしてもこの加工が好きになれないんですね。
木材の繊維部分を部材の半分以上切り欠いてしまう形になってしまいます。
木材は繊維が絡み合うことで強度が保たれている事実もありますので、極力繊維のつながりを残したいと思うんです。
それならどうするか。
入れ込む方法 < 土台の強度 ・・・
だったらアンカー邪魔じゃん! 切っちゃおう!
こう判断するわけなんですね。
そこで次の図をご覧ください
アンカーを切っちゃいましたので、土台は上からでも横スライドでもどちらからでも入れ込むことが可能となります。障害物がありませんからね。
これが前回の土台の仮置き状態となります。
この仮置きにあたってはアンカーの位置を先に墨出ししておく必要があります。
新設する柱の下に入ってしまってはよろしくないですからね。当然ですがアンカー用の孔もあけておきます。かつ、横方向には集塵(しゅうじん)用の孔もあけておきます。
どうです?
先の図と比較すると、材の欠損部分が最小限に抑えられているのがおわかりになるでしょうか。
溝ではなく丸穴ですから、仮に外力が加わったとしても局所的にかからず分散されるので、亀裂が入るという恐れも少なくなり、幾分かは心配が軽減でき安心度が増しております。
手前味噌ではありますが、これが考査であり、計画であり、お客様に安心して提供できる“価値”だと思っています。
少々マニアックではありますけどね。
細かなところではありますが、己が自信を持って説明ができ、お客様に提供できる施工が、良い品質につながると信じて取り組んでいます。
次回はこのイメージを元に、実際の打ち込み作業に移っていきますよ。
現場監理 金原