リフォーム記録

木製バルコニー改修 03【修復再生・施工検討】

築年数、約18年目を迎えるお住まいの木製バルコニーの改修工事です。

 

前回までは現地調査の上、損傷に至った浸水の経路などの考察を行いました。

それを元に今の状態と向き合い、自分なりに修復方法と再生方法を探り検討してみました。

当然大工職とも相談してですがね。

約18年前に組まれた木組みが全体として美しく現存しております。

極力今のこの美しさを維持したく変な風に崩したくはありません。

しかし今回の損傷個所はここ ↓ ↓ ↓

現状の木組の美しさは極力維持をしたままで修復再生をしたい。しかも最小範囲で。

でも柱の肝心な仕口部分が損傷している。

その部分は劣化損傷により耐力が期待できない為、切除して取り替えなければならない。

しかもバルコニー全体を解体することなく。

さすがに何日かは悩みましたね。悩みました。

色々と悩んだ末このような形での修復イメージでまとめました ↓ ↓ ↓

人それぞれに価値観と考え方が一緒ではないので皆さんならどのようになさいますか。

同じようにこちらも比べてご覧ください ↓ ↓ ↓

 

確定しているのは損傷個所の柱を切除すること。これは絶対。

ではそれをどこで切断するか。

柱の下の方は傷みがなくとても健全な状態です。

それであればしっかりと継ぎ手を造ることができます。

したがって約1mほど柱を切除し、その部分で継ぎ手を造り再生する方法とします。

用いる継ぎ手は”金輪継ぎ(かなわつぎ)”です。

⇒金輪継ぎ

継ぎ手の耐力としてはとても強く、古来より強度的にも確証ある継ぎ手形状の一つです。

他にも似たような形があります。

⇒追っかけ大栓継ぎ(おっかけだいせんつぎ)

⇒尻挟み継ぎ(しっぱさみつぎ、しりばさみつぎ)

これら三種は似ているようで微妙に違いがあるので、よろしければ画像で比較いただければと。

この三種を総称して”割り継ぎ”(わりつぎ)とも言います。

サン工房の新築物件でも木造の躯体にはこの継ぎ手類が用いられており、継ぎ手の強度面においてとても安心度が高くなっています。

そしてこの修復再生イメージを図式化したものがこちら ↓ ↓ ↓

 

少々わかりづらいかもしれませんね。

今までは柱が直に荷重を支えてくれていましたが、損傷の為その箇所を切断して除去します。

したがって今度は荷重をその柱単体で持たせるのではなく、面で持たせるべく①敷き梁”(しきばり)を入れます。

とは言いましても、結局のところ荷重は柱に伝わるのですが、

その荷重がある程度分散された形で柱に伝わるようになります。

それだけだと、その敷き梁は重力に沿って開きたがる習性が生まれてきます。

したがいまして、それを防ぐ意味も兼ねながら荷重を受けるべく②つなぎ梁”を入れます。

これが”③折り置き組”(おりおきぐみ)と呼ばれる形になります。

⇒折り置き組はこちら

さらに継ぎ手を造ったところの柱が不安定にならないよう拘束をしたいところです。

そこへもう一本④つなぎ梁”を入れます。

こうすることで、この木造の木組が安定して”⑤柱の継ぎ手”の負担も軽減されます。

どうです?

なんとなく荷重の伝わり方と、意味を持った拘束の感覚がイメージできますでしょうか。

 

この施工計画をもとに詳細な採寸作業に入ります。

弊社技能大工の長谷川氏です。

その技術と経験値はお墨付きですよ。

測定器なども用いて柱の角度なども確認します。

 

これを板図(いたず)と照らし合わせて確認していきます。

 

続けて仕口部分を詳細に見ていきましょう。

各箇所を採寸して寸法や傾きなどのクセを板に書き写していきます。

このクセを取ることを、建築用語では”光付け”(ひかりづけ)と言います。光るとも言いますね。

これが一番確かで間違いがないですよ。

色々線を書き込んでいくので、幾分かだんだんわかりづらくなってきます。

そこで色をつけることによって、より見やすく、よりわかりやすく、より理解しやすくなってきます。

そしてその板図をもって、採寸した箇所やお互いの認識にズレが生じていないかをその場で確認を行います。

 

そもそも誰も間違っていると思ってやっていませんから。

ふとした時に勘違いしてしまうんですよね。

複数人で確認し合うことで、このような凡ミスを防ぐことが可能となります。

当然、当事者としての責任をもっての上で。

ここを安直に考えていると、後で足元をすくわれやすくなるってもんです。

石橋は、叩いて、叩いて、疑って叩いて、確認してから渡るくらいが安全です。

それで作図が完成した板図がこちら ↓ ↓ ↓

 

これで現地採寸とクセ取りが整いました。

先ずは一息といったところでしょうか。

さぁ、ここからは大工職に任せる番となります。

これを加工できるんだからすごい技術ですよね。

私はムリムリ(ヾノ・∀・`) 汗

 

加工場では墨付けが進みつつあります。

材料は水湿に強い桧材を使用します。

 

次回は作成した板図をもとに、実際の加工に入っていく様子をお伝えしたいと思います。

それにしても難しい仕事ですよね。

さすがの大工職も苦笑いでした。

 

木製バルコニー改修 03【修復再生・施工検討】

現場監理 金原