リフォーム記録

大規模リフォーム・フルリノベ 05【解体編 vol.4】

築年数、約35年目を迎えるお住まいの大規模リフォーム・リノベーション工事です。

 

前回では解体進捗に合わせて断熱材の現況確認と今後の対応について少し触れました。

これらの断熱材も改めて見渡してみると、なんとなく落下の心配も考えられます。

おそらく新築当時はジョイント部にはガムテープを貼っていたことがわかります。

経年と共に剥がれてきており、一部分では若干落下の症状が見受けられていました。

リノベーションの実行にあたっては結果的に良いタイミングだったかもしれません。

 

屋根の断熱材を剥がしたところ、屋根の合板下地の色が一部はっきりと違うところがありました。

途中で屋根をやりかえたのかどうかは不明ですが、目視でもその新旧の違いがはっきりとわかります。

今回この部分は減築範囲なので解体撤去されますが、リノベーション工事は解体してみないとわからないところが実にたくさんあります。

様々な状況を目視で捉え、そこから色々と考えあぐねるのも思いのほか楽しいものですよ。

『どうしてこうしたんだろう?』

『当時何かあったのかな?』

『あぁ、だからこうしたのか!』

など、実際の施工状況と新築当時の施工時を思い浮かべながら色々と想像したりします。

少々変な言い方ですが、当時の施工者と空想の会話をしている感じでしょうか。

解体直後は”えっ?”と驚くこともしばしばありますが、よく観察することでそこから答えが導かれる場合も多々あります。

昔から『現場百回』なんて言葉があります。

ここまでくるとさすがに大袈裟ですけどね。

しかし、『解決のヒントは必ず現場にある』というのもあながち間違っておらず、よく観察と確認することはとても大切です。

 

解体が進むにつれ床暖房パネルも姿を現してきました。

こちらは何年か前にリフォームされた時の名残です。

 

通常のセオリーであれば、この暖房パネルの下面には断熱材がほしいところです。

温かさを逃がさず少しでも効率よく室内側に熱を伝えたいですからね。

しかしこのお宅はもともとOMソーラーという太陽熱を利用したパッシブソーラーの床下暖房システムが組み込まれていたので、断熱材が充填されておりません。

仕組みとしては、密閉された床下空間に屋根で温められた空気を送り、その熱をコンクリートに蓄熱させて放熱作用で室内を温める暖房方法です。

その為、床下には風の通り道となるピットと呼ばれる通路っぽい部分があり、ここを通って床下全体に屋根で温められた空気が通うような仕組みとなっています。

何年か前のリフォームでは、このOMソーラシステムは中断し、床暖房パネルに切り替えられていたようです。

しかし、床下は空間が限られているので下から断熱材を入れるのも不可能だったと想像できます。

このピット部分だけは空間があるのですが、さすがにここだけの断熱入れではあまり効果が期待できないのも現実です。

今回のリノベーション計画ではこの床暖房もやり直しますので、今度は断熱材をしっかりと充填して効果を最大限発揮できるように断熱改修もしていきます。

 

すぐ近くには階段がありますがここは手付けずの既存残しとなります。

支障のないギリギリのところでカットをして切り離していきます。

キッチンも新しく入れ替える計画ですので排気ダクトも撤去していきます。

サッシも既存残しの為、他を傷めないように慎重に解体撤去を進めていきます。

内部の解体もだいぶ進み、全体的に骨組みが見えるようになってきました。

玄関横の和室も同様に、柱や間柱といった骨組みが見えてきています。

画像をよく見ると2階へ伸びている配管があります。

約35年前といいますと、当時の一戸建てでは珍しかった2階のトイレが設計計画に盛り込まれていたようです。

ちょうどシャワートイレが一般家庭にも普及してきたころではないでしょうか。

このシャワートイレ、今でこそ普通と言っても過言ではないですが、もともとは医療用として開発されたもので、とても高価なものであったようです。

2階にトイレがあるので当然給水管と排水管がありますが、配管に布らしきものが巻かれておりました。

どうやら庭工事や園芸などで使用される幹巻きテープのようです。

今でこそ結露がしづらく柔軟性があり強度も優れたポリブデン菅や、排水音を軽減させる為の消音管やその目的の為の消音カバーなどが使用されておりますが、当時はなかなか都合が良い素材が普及していなかったのも事実だと思います。

その中においても、当時の職方が結露対策や消音対策の一環として持てる素材を使用して対策されたのでしょうね。

これについてどうこうは申しませんが、当時の職方さんの心意気は大いに評価してあげたいところであります。

特に建築工事においては見えなくなってしまうところの施工はとても大事なところです。

見えないから良しとするのではなく、見えなくなってしまうところだからこそ、より正確に、より慎重に、より正しい知識と施工が要求されます。

何も不具合が起こらなければそれで終わり。

不具合が起こらないからそれ自体が評価されにくい。

こう考えてしまうとちょっぴり寂しくなりますね。

でも違いますよ。

皆様、是非ご理解願います。

不具合が起こらないという事は、各職方がそれぞれの知識と経験をもって正確な施工がされている証拠であります。

しかし、ついつい見た目の領域だけで判断されがちな為、その真価が評価されないという事実があることを。

ここのところを少しでもご理解と評価いただけると、各専門職の職方はとても喜ぶと思いますよ。

私も喜びます 笑

 

大規模リフォーム・フルリノベ 05【解体編 vol.4】

現場監理 金原