コラム
減築のススメ
こんにちは。設計士の増田です。
今回はコラムの第6回、減築についてお話したいと思います。
「減築」はなかなか聞き慣れない言葉かもしれませんが、読んで字の如く、建物を縮小する工事です。
わざわざお金をかけて建物を小さくする必要があるのかとも思いますが、実際に事例がありますので、理由とともにご紹介していきたいと思います。
①老朽化した部分の解体
増築を繰り返し、家が広くなっている例はしばしば見受けられます。
実際に減築したこのお宅は、道路側の建物(古家)に増築するかたちで奥の2階建ての建物が建てられていました。
正面から見た写真です。
写真中央あたりに玄関がありますが、その横の和室は全く使用されていませんでした。
住まい手は親子2人でしたので、耐震性も考慮し、古い方は解体することにしました。
解体工事の様子。
重機が入れたので、作業は1週間程度で完了しました。
解体後の様子。
道路側から2階建ての増築側が見えるようになりました。駐車場間口も広がり、大型車も簡単に入れます。
玄関が無くなってしまったので、少し増築します。
こちらは基礎工事完了後の様子。
既存建物をなるべく解体しないよう計画しています。
床の高さ、外壁の取合いなど、既存建物と接する部分は十分な検討が必要です。
工事完了後。
増築部が主張しないような色や素材を選びました。以前からこうであったかのように。
敷地内も不用品を処分し、とてもすっきりしました。
これからカーポートを作ったり、菜園を始めたりと、いろいろと検討する余地ができました。
②敷地分割のための減築
敷地を分割し、別の建物を建てるために行う減築行為です。
子世帯の家を隣に建てる場合などが該当します。
左側の家を新築するため、右側の家の一部を解体しています。
解体する位置は構造的、施工的に無理のないところを設定します。
こちらのお宅も同様です。
右側に新築建物の基礎ができていますね。左側の家を一部解体し玄関を増築しています。
土地の分け方は「分筆」「分割」の2種類あります。2世帯近居を検討中の方は是非調べてみてください。
店舗の場合、駐車場を広げる、倉庫を建てる等の土地利用方法もあると思います。
③構造的に丈夫な建物にリノベーションする
前述した古い部分の解体撤去工事も含まれますが、例えば2階建てを平屋に変えてしまうこともできます。
建物高さが高いほうが地震に対して倒壊の危険性が高いので、2階部分を減らすことは構造的に有効に働きます。
平屋にロフトスペースのある家も良いと思います。
いくつか例を挙げてご紹介しましたが、その他にも減築する理由は考えられると思います。
私も何か積極的な理由がなければ減築行為を行う必要は無いと思いますが、それによって生まれる余白や建物の強さは良い効果を生むと考えています。
空き家が増加している今、既存ストックの利用は建築業界の課題でもあります。
私たちの発信を通じて、リフォームやリノベーションに興味をもって頂ける方が増えることを期待しています。
設計:増田