リフォーム記録

形に想いを込めて【束石】

和風の建物や外部の木質系構造物においては、独立で建たれる柱があったりしますがこのようなところには柱の下に束石と呼ばれる部材が配置されます。

素材は自然石だったりコンクリート製だったりと、その大きさや種類も多々ありますが目的は同じく柱を支え受ける為の礎石の役割を果たします。目的が変わらないのであれば少しでも美観にこだわりたい想いがあります。

ここでは錆御影の束石材を使用したのですが、どうしても一箇所だけ既製品の大きさでは若干大きく感じられたので、もっと美しく見えるように一手間を加え、少しだけ削り落とすことにしました。

先ずは石材用のカッターを用いて切れ目を入れていきます。刃の深さにも限界があるので、少しずつ何回かに分けて切り落としていきます。ある程度刃が入ったところで金槌で叩いてあげると、刃を入れたラインに沿って外側の石が思いのほかポロっと取れます。これを何回か繰り返して粗削りを行います。

これだけでも、もとの大きさを比べるとだいぶスリムになりました。

このままでは粗削り状態なので、今度はカッターではなく削り用のホイール刃に変えて、綺麗な表情になるよう少しずつ石の表面を整えていきます。

この石はもともとバーナー仕上げ又はビシャン風な仕上げとなっており、表面に細かな粒々の意匠となっておりましたので、その雰囲気を極力損なわないように石材用のカッターの刃先を軽くチョンチョンと当てるような形でテクスチャーを付け直しています。目を凝らしてみるとカッターの半円形が見えますので、何回か角度を変えて少しでも自然に見えるよう一手間、二手間を加えて表情を整えています。

テクスチャーはつくのですが、どうしても艶が消えてしまうんですね。そこで最後にクリアースプレーをほんの軽くだけ吹いて違和感の無いように仕上げています。

決して人様にお勧めできる作業内容ではありませんが、どんな小さなことでも想いを込めて手間をかけ仕上げることで、その見え方はより自然に、より美しく、より違和感のない調和のとれた美観となり、結果的に綺麗な建物としてお客様にお渡しし喜んでいただければ何よりです。

言わなければ気付かないところですが、少しでも綺麗に見せる為には”想い”と”実行”は不可欠要素ではないかと思います。

現場監理:金原